認知症の薬の中で漢方が使われているのをご存知でしょうか?
認知症の治療の薬として何種類かの漢方薬が使用されており、実際に病院から処方されています。その中でもよく使われている漢方が「抑肝散」です。
一体どんな漢方で、認知症のどのような症状に使われるのでしょうか?さらに抑肝散には副作用はないのでしょうか?
今回は認知症の薬として使用されている「抑肝散」の内容、そして副作用について解説します。
抑肝散とは?
漢方と聞くとどんなイメージをあなたは持っていますか?
中国の薬、生薬、風邪などに飲む薬といったイメージがある人が強いのではないでしょうか。さらに飲んだ事がある人は苦い、飲みにくい、匂いがダメなどと感じている人も多いと思います。
私自身は結構漢方を飲むことが多く、風邪、二日酔いの時は手が離せません。
そんな漢方ですが、抑肝散という名前の漢方が認知症の治療に使われています。この抑肝散とは一体どんな漢方なんでしょうか?
抑肝散
もともと漢方の中では「肝」というと精神や心のことを意味し、この精神や心、つまり神経の高ぶりを抑える作用があるとされている方剤の一つです。
古くから使われている漢方であり、イライラや易怒があったり、不眠などに使われたり、また子供の夜泣き、ひきつけなどにも使われる薬です。
成分 柴胡(サイコ)、釣藤鈎(チョウトウコウ)、蒼朮(ソウジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、当帰(トウキ)、川きゅう(センキュウ)、 甘草(カンゾウ)
上記のようなような成分が入っており、この7種類の成分が作用して精神的な症状が安定します。
・柴胡 熱や炎症をさまし、筋肉の緊張をゆるめる効果があります。
・釣藤鈎 脳循環を改善させる作用があるとされ、手足のけいれんなどにも効果があるとと考えられています。
・蒼朮 体内にある水分循環を調整する漢方であり、利尿作用があります。
・茯苓 蒼朮と同じで水分を調整する作用があります。さらに気分を落ち着けたり、動悸を抑える作用があります。
・当帰 血行をよくして貧血症状を改善させる作用があります。
・川芎 血行をよくして、血液を活気づける作用があります。
・甘草 緊張を抑える作用があり、緩和させる作用があります。
抑肝散など基本的には漢方は生薬で煎じて飲むものですが、一般の病院では、煎じる必要のない乾燥エキス剤を用いていることが一般的です。特にツムラの漢方が使用されていることが多く、54番が抑肝散になります。
認知症のどんな症状に抑肝散が使われるの?
認知症の人に抑肝散が使用される場合には、まずは認知症で怒りっぽくなったり、イライライしたりすることが多くなった時によく処方されます。
また不眠の訴えが強く、易怒が強い人などにも使用されています。抑肝散の本来の使い方のように、認知症によって出現している神経の高ぶりを抑える目的で処方されます。
さらに最近では幻視といった症状にも効果があることが報告されており、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症などに使用されています。
基本的には認知症の人でも活気があり、怒りっぽかったり、幻視が強い人などが処方される対象になります。
抑肝散の副作用は?
認知症の薬の中で漢方は結構処方されており、その中でも抑肝散が多く使われています。
抑肝散ですが、服用にムカムカしたり、食欲が低下するなどの胃腸症状が出やすいとされています。薬と違って漢方は慣れてくることが多いのですが、もともと胃腸が虚弱な方やちょっとしたことで食欲低下、嘔吐などみられる人は注意が必要です。
胃腸症状がでやすいことを念頭に入れ、もしも内服後から食欲が低下するようであれば漢方を中断するかもしくはかかりつけ医に相談しましょう。
胃腸症状に加え、肝障害、発疹などの報告もあります。
あと重大な副作用として偽アルドステロン症という病気があります。甘草という成分をとりすぎると腎臓での電解質のバランスが崩れ上記の病気を発症するおそれがあります。
全身倦怠感、血圧上昇、全身のむくみ、体重増加、手足のしびれ、痛み、筋肉のぴくつきやふるえ、手足に力が入らないといった症状がでた場合には抑肝散の副作用で偽アルドステロン症になっている可能性があります。
抑肝散服用後にこのような症状がでた場合にはすぐにかかりつけ医に相談して、薬を減量もしくは中止してもらうようにしてください。
基本的には漢方のため急に中断してもあまり変化は出てきません。
そのため本人、もしくは家族が内服後から調子がおかしいと思った場合にはすぐにやめましょう。
認知症の薬としても漢方も処方されています。漢方だから大丈夫だともしかしたら副作用が出るかもしれません。だから抑肝散服用中は十分注意をしてください。