男気の強い父!
その父が認知症になり、色々なことを経験しました。
ある日初めて威厳のあった父が泣いたのです。
介護を考えると胸が非常に痛む思い出でした。
これは私と父の波乱にとんだ認知症介護の体験談です。
父親が認知症?私の認知症の体験談!
今巷ではよく認知症という言葉を耳にします。
私は7年くらい前までは、その言葉にも全く関心がありませんでした。勿論自分は当時まだ40歳手前だったので自分がなるとは思ってないし、両親にしてもあれだけ元気なんだから全く気にしていませんでした。
特に父(本来は親父と呼んでいるのでこれからは親父表記します)は手に職を持った職人だったために人一倍頑固だしまたそれなりに説得力もあり、小さい頃は本当に怖い存在でした。
兄も同じ事を思っており、親父から逃げたいがために高校を卒業して直ぐに一人暮らしを始め家を出て行きました。
そんな頑固な親父に変化が現れたのはお袋が亡くなってからでした。
仕事も無気力となり、結局自分が経営していた会社は倒産に追い込まれ、ローンの返済もできなく家は競売にかけられてしまいました。
その後はひっそりと一人暮らしを始めていたのですが、今考えてみればこの頃から少しおかしい行動の始まりでした。
気が付き始めて頃がまさしく始まりだったようであり、翌年に深夜徘徊で警察にお世話になる事になりました。
まさか自分の家族がとは思いましたが、念のため病院に連れて行ったところ認知症の疑いがありますと宣告されました。
この時ほどショックなことはありませんでした。
とりあえず妻と相談して、親父の家の近くに新しくアパートを借りて毎日様子を見に行きながらの生活になりました。
ただ悪い事は重なるもので、私がある病気で入院しなければならなくなり、妻も私の入院と親父の看病に疲れ果ててしまい、ついには別れてしまいました。
だからこれから先親父の面倒を誰が見てくれるのだろうと本当に悩みました。
入院するまでの間、親父は一週間に一度は深夜徘徊を続けその度に探し回る日々でした。
区役所に相談を重ねた結果、ある病院を紹介され介護してもらう事になりました。
朝迎えに来てもらって昼は病院で過ごし、昼食、夕食もついて、さらにお風呂まで入れていただいて夜には家まで送り届けてくれるというものでした。
介護保険利用のおかげで日中の心配は少し減り、夜だけの介護となりだいぶ助かりました。そして今でも感謝しています。
お袋がなくなり家族は兄しかいません。
しかしその兄ももう少し協力してくれたらよかったのですが、もう20年くらい前から親父とは疎遠になっていて、わたしひとりが面倒を見てきました。
その私も入院する日が近づいたので、全てのことを介護センターの方にお任せして入院しました。
一応その間は離婚した妻が多少の面倒は見てくれていたみたいなんですが、困った事にやはり徘徊癖は治っておらず病院にいる間も何度も警察のお世話になったみたいでした。
退院後すぐに親父のところに行きましたが悲しい事にもうすでにその時には私の事を覚えていない状態まで悪化していました。
御丁寧に挨拶されて、「どちら様でしょうか?」と。
病院の先生にはこれから進行する病気であり、もう治らないと言われました。
あの威厳のあるおやじの姿はひとかけらもありません。これが認知症なんだと改めて感じ涙がでたのを覚えています。
退院してからの親父!これからの認知症介護とは?
私が退院してからですが、相変わらず徘徊は治っていません。
一番困ったのは、勝手に電車に乗って今まで住んでいた自分の家まで行ってしまうことです。
さすがにその時は驚きよりもむしろ怖くなりました。
何回もどうやって行ったか聞いても当然本人は覚えているはずもなく、ただいつも通り深々とお辞儀をして「どちら様でしょうか?」ですから。
本当に家族にとっては辛い病気だと思います。
本人が病気である事を認識していないのが本当に辛い事だと思います。
幸いわたしの親父は運がよかったです。
私が入院したことでとても良い病院を紹介していただき本当に助かっています。
今回親父の介護を通してわかったのは、いかに周りの人の援助が大切かという事でした。本当に私と親父は周囲の人、警察、行政、病院と多くの人に助けられました。これがなかったら今はどうなっていたかと想像するとゾッとします。
でも世の中にはまだまだ周りからの援助がない状態で家族が面倒を見ている世帯が沢山あるのが現実です。
今後益々認知症の方の数は増えていくと思いますし、介護を必要とする人も増えてくると思います。
認知症には正直この薬を処方すれば治るといった病気と違うのでいかに周りの人が助け合える環境を作るかが大事になってくるのではないでしょうか?
そして行政の方では、もっと認知症を含め高齢者に対しての介護についてもっと真剣に取り組んでいただければと思います。
いつかは自分がその立場になるのですから。